同期と非(https://www.synchronous.jp/articles/-/3104)をレビューしました
概要
本記事は、中国が日本の福島第一原発のALPS処理水放出を批判していることに対し、「中国の原発からのトリチウム放出量は日本の計画上限をはるかに上回る」という主張の真偽を検証しています。中国の公式データとされるものを引用し、日本の処理水放出計画と比較しています。
主な主張と判定
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主張1: 中国の複数の原子力発電所からのトリチウム年間放出量は、日本の福島第一原発のALPS処理水年間放出計画上限(22兆ベクレル)を大幅に上回っている。
判定: 正確
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主張2: 上記の中国原発のトリチウム放出データは、中国政府の公式報告書(中国生態環境部が公開する「中国原子力年鑑」や「中国生態環境状況公報」など)に基づいている。
判定: 正確
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主張3: 日本の福島第一原発のALPS処理水は、トリチウム以外の放射性核種が除去されており、トリチウム濃度も国の基準値の40分の1に希釈されて放出される計画である。
判定: 正確
根拠
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外務省: ALPS処理水に関するQ&A
- 「Q10. 中国の原子力発電所からのトリチウム放出量はどのくらいですか。」の項目で、中国の複数の原発からのトリチウム年間放出量が日本の計画上限を大幅に上回ることを示し、中国の公式データ(中国生態環境部)を根拠としている。
- 「Q1. ALPS処理水とは何ですか。」の項目で、ALPS処理水がトリチウム以外の放射性核種を国の規制基準値を十分に下回るまで浄化し、トリチウムも国の基準値の40分の1に希釈して放出する計画であることを説明している。
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経済産業省: ALPS処理水に関する情報
- ALPS処理水の安全性や放出計画について詳細な情報を提供しており、トリチウム以外の核種除去と希釈に関する記述がある。
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東京電力ホールディングス: ALPS処理水について
- ALPS処理水の概要、多核種除去設備(ALPS)による浄化、トリチウムの希釈放出計画について説明している。
- 他国の原発からのトリチウム放出量との比較データも掲載されている場合がある。
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国際原子力機関(IAEA): 福島第一原子力発電所ALPS処理水の安全性レビューに関する包括的報告書が発行されました
- IAEAが日本のALPS処理水放出計画の安全性レビューを行い、国際的な安全基準に合致していると結論付けている。トリチウム以外の核種除去と希釈に関する日本の計画を評価している。
注意点/限界
- 本記事は、中国の過去のトリチウム放出データに焦点を当てており、最新のデータや全ての原発のデータが網羅されているわけではない可能性があります。
- トリチウム以外の放射性核種(ALPSで除去されるもの)の放出量については、中国側からの詳細な公開データが少ないため、厳密な比較が難しい場合があります。
- 各国の原発における放出基準や測定方法には違いがある可能性があり、単純な数値比較だけでは全ての側面を捉えきれない場合があります。
- 本記事の目的は、中国の批判に対する反論の根拠を示すことにあり、科学的な安全性評価そのものを詳細に行うものではありません。